塔婆
 我々はお塔婆とか、たんに塔婆と呼ぶ事が多いのですが、正しくは卒塔婆(そとうば)といいます。この“そとうば”という言葉はお釈迦様が生きていらした頃のインドの言葉“ストゥーパ”を音訳したものです。
 
 ではストゥーパとは何なのかと申しますと、これは元々「頭のはち」という意味でした。当時インドでは人が亡くなりますとその遺骸に土を盛り上げて土まんじゅうを作りました。日本の小さな円墳を思い浮かべてください。やがて年月が流れ、表面に草が生えてまいりますとちょうど人間の頭のはちに見えます。そこでお墓のことを頭のはちストゥーパと呼ぶようになったのです。そのストゥーパという言葉に仏教がインドから中国に伝わった際に卒塔婆という漢字が当てられました。真ん中のという字を見てください。土を合わせて、その上に草かんむりです。これは土まんじゅうのお墓を表しているのです。

 インドの塔を見ると分りますがみな土まんじゅう形ですし、日本の五重塔なども頂上にある相輪と呼ばれる金属の飾り、その一番下に伏鉢(ふくばち)というお椀を伏せた形のみ仏のお骨を収める場所がちゃんとあります。

 やがてみ仏のお骨(舎利:シャリ)の収められた仏塔そのものが仏なのだと考える人があらわれ、そこに仏教の教理をあてはめたものが作られるようになりました。我々真言宗では世の中の全てのものは地(固形)、火(熱)、水(水分)、風(動き)、空(それらの存在を与える場)という地水火風空の五大により成り立っていると説きます。そこでその教えを体現した五輪塔と呼ばれる石塔が登場しました。立方体で地を、三角錐で燃え盛る炎を、球で水を、ゆらゆらと動く半球で風を、尖ったものも丸いものも全て含んだ宝珠で空を表しています。
 この五輪塔を言葉は悪いですがスライスしたものが現在の一般的な木製の卒塔婆なのです。ですから四角の上に三角、丸、半円、宝珠の形にちゃんとなってるでしょ?そしてそれぞれを表す梵字、上からキャ・カ・ラ・バ・アが書かれているのです。また裏側にはそれら全てを貫くように真言教主の大日如来様を表すバンという字が書かれています。世の中の全てのものは大日如来様の顕れであるという事です。

 卒塔婆の質問で、裏表はあるのですかというものがよくあります。これは卒塔婆をお手紙のようなものだとお考えいただければ分りやすいでしょう。宛名であるお戒名が書かれた側が表、差出人である施主名が書かれた方が裏となるわけです。そして、住所である回忌ごとのご本尊様を表す種字(一周忌、勢至菩薩様ならサク、三回忌、阿弥陀さまならキリークなど)がキャ・カ・ラ・バ・アの下に書かれております。それでは手紙の中味は?それは僧侶の読経とお花、お焼香の煙り、忘れてはいけない皆さんの祈念であります。

 いかがですか?卒塔婆はみ仏と同じであるのです。また亡くなった方々へのお手紙でもあるのですから、それを建てる時に決まりはありません。子供さんの成人や結婚、などおめでたい時にもぜひご先祖様へ差し上げて下さい。

注:文中に難しい言葉の解釈がでてまいります。特に「空」という言葉は大変難解で文章では誤解が生じやすいと思われます。詳しく知りたい方は円東寺住職に直接質問なさるか、専門書をお読み下さい。

それらの疑問質問にお答えするテレホン相談もございます。お坊さんが交代で応対しております。

◆仏教テレホン相談(月〜金曜日10時から12時、13時から16時)
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